企業は何のために採用活動をするのでしょうか。
ただやみくもに採用活動を行うわけではなく、企業ごとにそれぞれ採用の目的があって人材を採用しています。企業がどういった目的で採用を行うのか、その目的を明確にしておかなければ適切な手法で採用はできません。そこで今回は、企業がなぜ採用をするのかその目的と、目的に応じて変わる採用方法について解説します。ポイントは採用の目的は企業が置かれている状況によっても変わり、大きく分けて「増員と欠員補充」2つがあるということです。本記事では、企業が採用を行うにあたりどういった目的で採用活動を実施するのか、また新卒採用と中途採用で目的が異なるのか解説していきます。実際に目的に合わせて適切に採用を行うことで課題を解決できる可能性を高めることができるので是非参考にしてください。
目次
採用を行う目的は大きく分けて2つある!~欠員採用と増員採用の違い~
企業はやみくもに採用活動を行うわけではなく、目的があって人材の採用を行います。一般的に、企業が採用を行う目的は、大きく2つあります。まずはその違いについて解説します。
人材不足による欠員補充のための採用
1つは、企業が設定した目標と経営戦略を実現するために「不足している(不足すると予想される)人材」を補うためです(欠員補充のための採用) 。
定年退職やライフイベント、ライフスタイルの変化により企業の人員は自然と減少していくものです。それを補い、会社の規模を維持するためには、新しく採用を行い不足している人材を補う必要があります。
最近では社会情勢の変化や感染症の影響なども絡まって人材不足の問題は複雑化しています。
人手不足により従業員の業務が多忙になってくると、労働時間や勤務日数が増えるだけではなく、何のために働いているのかという「働きがい」や「意欲」にまで影響を及ぼす可能性があり最悪の場合、新たな離職につながるという悪循環が発生してしまうこともあります。
特に少ない人員で業務を行う部署等では、一人でも欠員が出るとメンバーに大きな負担がかかります。一日でも早く人員を補充し、業務の偏りをなくす必要があります。
欠員補充のための採用の場合、退職者に代わって滞りなく日々の業務を回していくためにもできるだけ早いタイミングで採用を完了するスピード感が求められます。また知識や経験のある即戦力人材の確保や高スキル人材の確保が必要になるため欠員補充の採用ではほとんどが中途採用により実施されます。
企業発展のための増員による採用
2つ目は、会社の規模や事業を拡大させるため決められた人員定数を変更して戦力となる新しい人材を増やすためです(増員のための採用)。
会社が抱える事業課題を解決するために、適切なスキルや経験がある人材を採用します。事業拡大のために新しく人員を募集するのもこのひとつです。新規事業を始める際にはスキルやノウハウをもつ即戦力人材を確保できれば、ビジネスの幅が広がり企業発展に繋がります。特に、こうした人材が必要になります。
新しい人材の採用は、企業に新しい文化や知識、スキルを持ち込みます。それにより、企業や組織が活性化し企業の成長スピードを高めることが期待できます。
また、企業文化の継承や部門ごとの人員バランスを保持、企業体制強化を図るために採用を行うケースもあります。企業発展のための増員募集の場合、事業計画や企業の求める人材に基づいて新卒採用、中途採用どちらも実施されます。
採用の目的や求める人物像に合わせて、新卒採用と中途採用を使い分ける必要がありますので下記の様な点に注意しましょう。
・必要なポジションの業務は未経験者でも務まる業務か、経験者でないと務まらない業務なのか
・採用、入社までのタイミングとして期間に余裕があるのか
・入社後の教育の体制は整っているか 等
では、次の章で新卒採用、中途採用それぞれの目的の違いについて具体的にみていきましょう。
採用の目的に応じて新卒、中途を決める3パターン
採用の目的に応じて採用を新卒採用でいくか、中途採用でいくかを決める形になります。
大きく分けて3つのパターンがあります。
自社にないノウハウや経験が欲しい場合は中途採用
自社が今までに実施したことのないノウハウが欲しい場合や、経験が欲しい場合は中途採用を選択するケースが多いです。
この場合中途採用者に求めるものは、自社にない「ノウハウ」や経験」になります。
例えば「上場準備のための管理部門での経験COO」や「マーケティングを駆使して集客を最大化させたい」など、
採用することで自社を変革をもたらす人の採用になります。
利用する採用手法としては、求人広告(スカウト型)、ダイレクトリクルーティング、人材紹介、ヘッドハンティングなどの採用手法を導入していくパターンが多いです。
将来の幹部候補の採用目的の場合は新卒採用
将来の幹部候補を採用目的にする場合、新卒採用を選択する企業が多くなります。
人材像については、「成長意欲」がある方、「優秀」な方になります。
中途採用市場にもいない訳ではないですが、成長意欲が高く、優秀な方は既に企業で活躍している場合や、独立起業しているケースがあるなど、重宝されているケースが多く、採用確率は大きく下がります。
新卒から人のために働きたい、自分を成長させたいと思っている方こそ、将来の幹部候補として会社を引っ張る存在になってくれます。
利用する採用手法としては、新卒メディア(リクナビ、マイナビ、あさがくなび)や就職フェアなどです。
業務を回す人は欲しい採用目的の場合は新卒採用か中途採用
何の業務を回してほしいか、採用人数や時期により選択が異なります。
大量に人数が必要な場合は中途採用市場から集めるのには無理がありますので、新卒採用重視での採用になります。
単純作業や応用性を求めない場合は、アルバイト採用や中途採用で採用基準を自社の社風とマッチする人材やビジネスマナーがしっかりしている人などハードルを下げて採用活動する形になります。
増員目的であれば【新卒採用+一部中途採用】、欠員補充目的であれば【中途採用】のケースがほとんど!採用対象によっても目的は異なります!
新卒採用と中途採用はそれぞれ異なる目的で異なる人材を採用します。採用の目的や背景、求める人材像に合わせて、新卒採用と中途採用を使い分ける必要があります。
新卒採用の背景は企業発展や成長のケースが多いため増員が目的になるケースがほとんど!
新卒採用では、増員を目的に用いられることがほとんどです。
理由としては下記のような点が挙げられます。
・ポテンシャルが高い優秀な人材を獲得しやすい
・社会人経験がない分、企業文化が浸透しやすい
・将来の幹部候補生なども育てやすい 等
企業文化の継承や企業発展などを背景に人員の増強のため人員のバランスを取り、若手の労働力を確保するため新卒採用を実施することで、特定の年に人員が偏らず、バランスを保ちやすくなります。
中途採用の背景は退職者発生時などにスキルのある即戦力採用で穴を埋めるため欠員補充が目的になるケースがほとんど!一部では増員が目的になる場合もある!
中途採用では欠員の補充を目的として用いられることがほとんどです。
理由としては下記の様な点が挙げられます。
・企業が求めるスキルをもった即戦力人材の採用が見込めるため
・入社後すぐに戦力としての活躍が期待できるため
・育成や研修にかける期間が少なくて済むため 等
タイミングが読みづらい退職者の発生時にはできるだけ早急に穴を埋める必要があるため、入社時期が固定化されない中途採用を実施することで、必要なポジションに優秀な人材を充てることができます。
その他、中途採用の一部では新規事業や店舗増設など事業拡大のタイミングに合わせて体制強化のために増員目的で用いられることもあります。
企業発展による増員として用いられるケースとしては以下のような点が挙げられます。
・新規事業や新店舗の立ち上げ等でリーダー・管理職ポジションの人材が必要
・事業拡大に伴い新しいノウハウや実績のある人材が必要
・事業が好調で案件過多により人手不足が発生しているため人材が必要
新卒採用に比べ中途採用は入社時期も調整しやすいためすぐにでも人材が必要な際には
増員目的で中途採用を用いるケースもあります。
このように企業の置かれている状況によっても目的に応じて取るべき手法や戦略は異なります。
欠員採用の場合に取るべき主な手法3選(掲載型求人、ダイレクトリクルーティング、イベント)
欠員補充の場合には多くの場合スピード感が求められます。しかし一言に欠員採用といってもその状況は企業によっても異なるため、目的に応じて取るべき手法も考えなければなりません。ここでは欠員採用でよく用いられる手法を紹介します。
① 掲載型広告…求人サイトに求人情報を掲載し、求職者にエントリーしてもらう採用手法です。
【採用スピード〇、母集団形成〇、採用コスト〇】
多くの媒体が1掲載あたり4週間から12週間掲載でき、費用も中途採用のサイトの場合、30万円前後から掲載が可能です。利用者も多いため多くの求職者へ自社を知ってもらうことができるため、母集団形成もしやすい手法です。
おすすめの媒体としてはリクナビNEXT、doda、エン転職、マイナビ転職などが挙げられます。
② ダイレクトリクルーティング…企業側が欲しい人材を獲得するために、企業自身が選択できる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用手法です。
【採用スピード◎、母集団形成△、採用コスト〇】
さまざまな人材が登録されているデータベースから求める人材を探す方法で、企業から候補者に対して能動的なアプローチができるため、自社の魅力や採用担当者の熱意を伝えやすいメリットがあります。
待遇面や入社時期などの希望を直接ヒアリング・交渉できるほか、採用のミスマッチを防ぐことができるというメリットもあります。一方で一度に多くの候補者へアプローチすることが難しいため、大量採用には不向きな手法といえます。
おすすめの媒体としてはdoda Recruiters、キャリオクなどが挙げられます。
③ イベント…転職フェアとも呼ばれ、1つの会場に数多くの企業の採用担当者や社員が集まり、企業ごとに割り当てられたブース内で、転職希望者に向けて会社説明や面談を行い採用に繋げる手法です。
【採用スピード◎、母集団形成◎、採用コスト△】
中途採用は通年行われていますので、転職フェアも小規模なものを含めると、週末を中心に全国各地で数多く開催されています。転職フェアに出展することの1番のメリットは、求職者と直接話すことができ採用までのスピードが速い点です。
また掲載型広告よりも転職顕在層のみならず転職潜在層へのアプローチがしやすいのも、転職フェアの良いところです。
おすすめのイベントとしてはマイナビ転職フェア(マイナビ転職)、転職博(Re就活)、エンジニア転職フェア(type)が挙げられます。
増員採用の場合に取るべき主な手法3選(ハローワーク/公共職業安定所、自社採用サイト、合同企業説明会)
増員採用においても3章で記載した手法は用いられますが、加えて増員採用時に用いられる手法を紹介します。
① ハローワーク/公共職業安定所…厚生労働省が管轄する行政機関であるハローワークに求人募集を依頼し、求職者からのエントリーを待つ採用手法です。
【採用スピード〇、母集団形成△、採用コスト◎】
ハローワークでは民間企業ではなく国が運営しているため、求人情報の掲載にあたって費用がかかることはありません。採用コストを最小限に抑えられることはもちろん、各地域に拠点があることから地域密着型の採用も可能です。また、ハローワークは多くの人に知られていることから、幅広い求職者に自社の求人募集を周知できます。一方で登録できる求人情報は最低限の内容に限られるため、求人情報誌や求人サイトのように自社の魅力や強みをアピールすることが難しい傾向にあります。
② 自社採用サイト…自社専用の採用サイトを立ち上げ、直接Web上からエントリーしてもらい採用につなげる採用手法です。
【採用スピード△、母集団形成〇、採用コスト◎】
自社採用サイトでは、募集要項に加えて自社の魅力や強みを自由に発信できるメリットがあります。
求人情報誌や求人サイトだけでは伝えきれない内容や独自のコンテンツを掲載できるほか、求人情報の掲載料や採用に至った場合の報酬などを外部の企業に支払う必要がないこともメリットのひとつです。
③ 合同企業説明会…主に就職希望者(就活生)が集う、合同の会社説明会へ出展し、主に新卒を募る採用方法です。
【採用スピード〇、母集団形成◎、採用コスト△】
大手サイトが主催しているイベントや合同企業説明会もあれば、地元企業や自治体が主催しているものまでさまざまです。
合同説明会にはさまざまな企業ブースがあり、多くの企業の情報を集めようとたくさんの学生が来場しています。自社に興味を持っていなかった学生を振り向かせる機会でもあり、学生に自社の存在を知ってもらい、自社の魅力を直接伝えることができることがメリットです。
おすすめの媒体としては就職博(あさがくナビ)、リクナビ、キャリタスなどが挙げられます。
採用の目的を明確することで成果に繋がった事例2選
目的を明確化することによって人材採用を成功させている企業も存在します。ここでは、人材採用に成功した事例を2つご紹介します。
事業拡大での増員募集~中途採用から新卒採用に切り替えて成功~
長期的に中途採用のみを行っていたA社。これまで採用自体はできていたものの採用しても離職の繰り返しで採用を続けていました。しかし本来の採用の目的は「将来の企業発展と幹部候補の若手人材確保のための増員採用」であったことから、中途採用ではなく新卒採用にシフトすることになりました。中途採用とは異なり採用するにも媒体へ掲載するだけでなくイベント出展や、内定後から入社までの間のフォローなど一層の時間と労力がかかったものの、結果としては目標としていた人数を入社に繋げることができました。中途採用に比べて採用単価も抑えることができただけでなく、新卒は定着がよく、ポテンシャルも高いため新入社員が頑張る姿を見て既存社員も刺激を受けて会社全体の活性化にも繋がっています。
ベテラン社員の退職で欠員募集~1か月以内に経験者即戦力採用に成功~
本社が愛知、他に鳥取、広島、沖縄に支店を持つB社。業績は好調でこれから更に事業拡大を目指そうとする最中でほぼ同時期に人事部門と営業部門のベテラン社員の退職が発生してしまいました。早急に「即戦力人材の確保、退職者のポスト補充」が必要でしたが、人事部門に関しては採用業務ができても自社のことをよく理解している者でないと務まらないため、人事部門は社内で活躍しており適性のある社員を異動させ、一旦営業部門の採用に注力することになりました。これまでも専門性の高いスキル・ノウハウをもつ人材を採用するため中途採用は実施してきましたが勤務地が地方寄りということもあり、掲載型媒体ではなかなか応募が集まらなかったため、人材紹介サービスとダイレクトリクルーティングサービスを活用し短期間での採用に成功しました。中途採用で経験・スキルのある方が採用できたため入社してからの教育や育成にかかるコストはもちろん大幅にカットできています。
質の高い採用を定期的に行い「正のスパイラル」を作る事が大切です
「増員目的」の採用を定期的に行い、人手不足の状態を作らない事が大切です。
なぜなら人手不足に陥ると従業員のワークライフバランスが悪化してさらなる離職、人手不足を生む「負のスパイラル」に陥る可能性があるからです。
最近ではワークライフバランスの向上を意識して仕事選びをする人が増えています。
例えば「長時間労働」「低賃金」「休みが取りにくい」など悪いイメージが先行しがちな業界では特に離職率が増加しています。他にも離職者が発生した場合に採用活動を始めたとしても採用完了までに期間を要するため、多くの企業は、その間業務の一部を外注化したり、従業員の多能工化や兼任化、残業を増加するなどして対応します。しかしこれがさらに従業員の負荷となり離職につながるという負のスパイラルに陥ることもあるため、欠員補充が急務になっている企業が多いのです。
採用をとめた先に待っているのは停滞、衰退のいずれかしかありません。そうならないようにするためにも、適正な採用を定期的に行い正のスパイラルを作っていきましょう。
適正な採用のためには現状を把握しどのようなターゲットをいつまでに採用する必要があるのか(期間)×何名採用する必要があるのか(人数)×掛けられる予算はどの程度なのか(費用)、目的を今一度明確にしたうえで計画的に行っていくことが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
採用は単なる人員補充ではなく、課題解決や企業の成長を目的とする非常に重要な業務です。近年、採用手法は多様化しています。従来の手法と合わせて様々な手法がありますが、その中でも求職者の特性に合わせてピンポイントでリーチするような手法がトレンドとなりつつあります。複数の採用手法を組み合わせて適用する企業も多いです。
採用の目的に合わせて自社にとってどのような手法が合うのか、課題を洗い出した上で進め方を検討し自社に合う採用の形を見つけていきましょう。